2010年03月07日

アマチュア無線不要論? (2)

池田信夫氏の「アマチュア無線って必要なのか」の中で出てくる、「それなのに、アマ無線には60MHz近い周波数が割り当てられている」というお話は、事実です。日本でアマチュア無線に割り当てがある周波数帯は、1,200MHz帯までを合計すると大体60MHzぐらいあります。そしてその大半は1,200MHz帯で、40MHzもの帯域をアマチュア無線で使うことができます。

ただし、実は1,200MHz帯はアマチュア無線が独占して使える周波数帯ではありません。この周波数は、航空路監視レーダー(ARSR)へ一次業務として割り当てられており、アマチュア無線は二次業務扱いとなります。つまり、40MHzもの周波数帯がある1,200MHz帯は、アマチュア無線で使用する場合には、ARSRを妨害しないようにしなければなりません。

こんな事情がある周波数帯ですから、ARSRがこの周波数から撤退しない限り、新たな業務で使うことができません。アマチュア無線が多くの周波数を使っている印象をつけるために1,200MHz帯を例に挙げたのかもしれませんが、図らずも違う業務同士で融通しながら使っている現状を証明する結果となりました。

そして1,200MHz帯は、アマチュア無線では比較的新しい技術を使って実験する際に、よく使う周波数帯です。ずいぶん昔からテレビ電波の送受信で使われてきましたし、最近ではD-STARというデジタル通信でも使われています。この周波数がアマチュア無線で使えなくなると、新しい実験をする機会を失うことになりますから、アマチュア無線のそもそもの存在意義が激減してしまいます。

そして、次に広い10MHzの帯域を持つ周波数帯である430MHz帯も、アマチュア無線は二次業務扱いです。430MHz帯も、先に説明したD-STARで使用している周波数であるとともに、衛星通信などでも使用しています。合計で60MHzもの帯域が使えるアマチュア無線は、実はその大半を他の業務と共有して使用しているに過ぎません。

日本に限った事情ではありますが、世界的に見た場合、アマチュア無線局の数の割には、使える周波数帯は少ない傾向があります。世界を3つの地域に分けた際に、日本は第3地域となりますが、その地域でアマチュア無線に割り当てられている周波数帯よりも、多少狭い傾向があります。そして、南北アメリカ大陸が対象になる第2地域では、アマチュア無線にさらに広い周波数帯が割り当てられています。

次に、「このようにアマチュアの団体が大きな政治力をもっているのは、それが無線技術の生みの親だからである」とありますが、私は大きな政治力をアマチュア無線家や団体が持っているとは思いません。日本アマチュア無線連盟(JARL)が、ある一定の影響力を持っているかもしれませんが、JARLやアマチュア無線家が望んでいることが実現しているわけでもありませんし、JARLそのものも会員数を減らしていますから、影響力も少なくなっています。
posted by 「なにかな」管理人 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ラジオ・無線
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