2010年03月13日

アマチュア無線不要論? (3)

池田信夫氏の「アマチュア無線って必要なのか」の中で、最もわかりにくくなっているのが、アマチュア無線とPLCの関係です。同じ文脈の中に1,200MHz帯とPLCの話題が同居しているために、これではあたかも1,200MHz帯を解放すれば、同時にPLC問題も解決すると誤解してしまいます。

PLCが使用する周波数帯は、中波(AM)放送が使う周波数の少し上あたりから。2MHzから30MHzあたりまでを使うといわれています。1,200MHz帯よりも、ずっとずっと低い短波帯の周波数の問題です。電力線を使って通信する方式なので、無線のように広範囲に影響することはないとのことですが、電力線そのものがシールドされていないため、ノイズに弱くなる反面、通信で使われるはずのエネルギーが電線の外へ放射されることが指摘されています。

エネルギーが電線の外へ放射されると、もともとその周波数を使っている業務が妨害されますし、エネルギーが外へ放射されなくても、電線を伝って無線機器に影響を与えてしまうというのが、PLC反対派の論理の原点です。

PLCは総勢28MHzぐらいの幅の周波数を使います。PLCが使う周波数の中に、アマチュア無線が使う周波数が点在していますが、その合計は3MHz強ぐらいになります。最近、アマチュア無線への短波帯の周波数割り当てが増えてきたといわれていますが、実はそんなに多くの周波数を占有しているわけではありません。主に海外向けの短波放送や、航空洋上管制、漁業無線などに使われています。

PLCに物言いをつけたのがアマチュア無線家が多かったためか、現在市販されているPLC機器にはノッチが入れてあります。アマチュア無線で使う周波数には影響が出ないようにしてあるのです。そのため、PLCが使える周波数は25MHzぐらいになってしまいますが、これも自主規制の範囲内で、法的な基準はありません。

ですから、今のところアマチュア無線には影響が出ないように作ってありますが、逆にアマチュア無線で使わない周波数には影響が出ることがあるということです。それは以前から、こちらでレビューしているような短波つきの中華ラジオも、決して例外ではありません。

世界の出来事が映像付きで駆け巡る衛星通信全盛の時代に、短波放送がしぶとく生き残っているというのが不思議に感じるかもしれませんが、短波放送が必要とされる理由は、私は今でもあると思っています。短波放送が支持されるのは、ひとえに情報伝達コストの安さでしょう。

短波は、電離層反射を繰り返して遠くへ届くという特性があります。短波を使った業務のほとんどがその特性を利用しているわけですが、特に中継設備を使うことなく実現できてしまうところに強みがあります。短波放送はこの特性を利用して、自国内から相手国へ直接情報を送っています。

短波放送を聴く利用者として、間に別の組織を経由して情報を受けることなく、直接情報を受け取れるのは、大きなメリットとなります。良い悪いは別として、その国の主張を100%受け取ることができますし、間に入った組織の取捨選択を受けることもありません。より多くの情報を得る手段として、PLCを優先してしまうのは、自分自身の耳を塞ぐことになりはしないかと思うのです。
posted by 「なにかな」管理人 at 11:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ラジオ・無線
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