ICOM IC-9100Mの受信の話を出しましたので、少し専門的な内容についてここで触れておきたいと思います。
カタログスペックを見ると、周波数安定度のところに「±0.5ppm以内(0℃〜50℃)」と書かれています。この数値が周波数安定度の性能を示しているのはわかるのですが、どれだけのものかというのは、いまいちピンときません。ちなみにIC-9100の試聴会で同様の質問が出たのですが、「±0.5ppm以内(0℃〜50℃)の周波数安定度です」と回答されて、結局わからず仕舞いになってしまいました。
まずわからないのは、「ppm」という単位です。私たちがよく接するのは、大気汚染物質なんかの濃度を示すときの単位ぐらいかと思いますが、「パーツ・パー・ミリオン」の略で、単に100万分の1という意味でしかありません。なのでIC-9100Mの場合、「最大で100万分の1のさらに半分しかズレません」ということになります。
解説としてはこれで終わってしまう話なのですが、もう少し実体験に即した内容まで落とし込んでみようと思います。
たとえば7MHzで送受信したい場合、ディスプレイに表示された周波数と実際の周波数で、どれだけの誤差が発生するかを見てみます。上でふれた内容をもとにすると、1MHzあたり最大で±0.5Hzの誤差が生まれるとのことなので、単純計算で最大±3.5Hzということになります。IC-9100Mの周波数表示は、一番右の位で10Hzの単位なので、もはや周波数表示では表現できないレベルです。
さらに50MHzで送受信した場合は、最大で±25Hzとなります。電信の音を聞いても、多少音階が違うかもしれない程度にしか感じません。これほどまでに正確な送受信を実現しているというわけです。IC-9100の試聴会でも、こういう風に説明してくれたらと思った次第です。
でも少し注意しなければならないのは、周波数が高くなればなるほど誤差が大きくなるという点です。先程の計算を続けていくと、たとえば430MHzで最大±215Hzの誤差となりますし、1295MHzに至っては最大±647.5Hzの差が発生する計算になります。こうなると表示周波数でピッタリ合わせても、実際の周波数は少し違ったなどということが起こる可能性があります。しかし実際の使われ方は、430MHz帯以上では周波数のズレが許容できるFMでの運用が多く、電信などの交信をするケースは少ないと思うので実害は少ないと思いますが、一応意識するに越したことはないと思います。
ちなみに他の無線機での周波数安定度は、たとえばVHF/UHFオールモード機のIC-911は「-10℃〜+60℃で±3ppm」、IC-7600/7410/7000はIC-9100Mと同様に「0℃〜+50℃で±0.5ppm」、ケンウッドのTS-2000ではメイン表示部に限定すれば「-10℃〜+50℃で±0.5ppm」、バーテックススタンダードのFT-950は電源投入1分後の数値が「-10℃〜+50℃で±1.0ppm」と発表しています。どの無線機も周波数安定度は、それなりに確保しているようです。
2011年09月02日
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